PIC の概要、機種選定、開発環境について報告します。参考にしてください。
以前紹介した後閑さんの解説書２冊
- 電子工作のための PIC 活用ガイドブック
- 電子制御のための PIC 応用ガイドブック
PIC のプログラムライタですが、今回は RS-232C 接続のライタを紹介しましたが、パラレル接続のライタもあります。シリアル方式を選んだのは個人的な趣味です（L-Card+ との接続でシリアル通信の環境は当然用意される。Visual Basic でのハード制御をやってみたい etc...）。やっぱりパラレル接続の環境がいいという場合には、改めて紹介します。
最後に LCD モジュールについても簡単に紹介しています。
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○ PIC の概要
PIC (Peripheral Interface Controller) とは、コンピュータに接続された周辺機器のインターフェースを制御するために開発された RISC アーキテクチャのマイクロコントローラ。開発元は米国の Microchip Technology Inc.。内部にマイクロプロセッサ (CPU)、プログラムメモリ（フラッシュROM）、データメモリ (RAM)、I/O ポート、ウォッチドッグタイマ、クロック発振器など、マイコンとして必要な要素をワンチップに搭載しているいわゆるワンチップ・マイコン（普通クロックは外部に設けるが）。PIC 一個の価格は数百円〜千円程度とアマチュアでも手が出しやすい。PIC に 2.5 ￣5V 電源、10MHz 程度の発振器を接続するだけで機能する（電池駆動可）。PIC の命令数はわずか３５という簡素な構造であるが、応用例を見るとわかるように必要な機能はこの少ない命令で十分に実現することができる。もちろん割り込み機能も使える。最小の PIC は８ピンの 12C508A。たった８ピンにもかかわらず I/O ポートを５本備えている。I/O ポートのドライブ能力は数10mA あり、LED 等を直接駆動できる。A/Dコンバータ、シリアル通信、パラレル通信などの機能を内蔵した高機能版の PIC も存在する。アセンブラで開発する分には、無料の統合開発環境 "MPLAB" を用いることができるが、C 言語を使ってプログラム開発をしたい場合にはそれなりの投資が必要となる。
○ PIC の選定
PIC ファミリーはデバイスの種類がとても豊富である。多数存在する PIC ファミリーの中から、I/O ポートの数、メモリーの大きさ、通信機能、A/D コンバータのチャンネル数など、システムが要求する仕様に合致した PIC を選定する必要があるが、とりあえずは解説書などで取り上げられている（標準的な？）PIC を使ってみるのが良いのではないかと思う。この標準的な PIC は、I/O ポートの数、シリアル通信機能など、我々の当面の要求を満たしており、ひとまずはこれで PIC システムのトレーニングをして、必要ならば PIC の扱いに習熟してきた段階で最適な PIC を選定し直しても良いと思う。
ということで具体的に最初に使ってみる PIC として次のデバイスを推薦する。
PIC16F873
| ピン数 | 28 pin |
| プログラムメモリ | 4K words Flush Memory (*1) |
| データメモリ | 192 bytes |
| データ EEPROM | 128 bytes |
| 最大クロック周波数 | 20 MHz |
| 最大 I/O ポート数 | 22 ports |
| 10bit A/D ch数 | 5 ch |
| シリアル通信 | USART (*2), I2C/SPI (*3) |
| タイマモジュール | 16bit x 1, 8bit x 2, WDT(*4) x 1 |
| BOR 機能 (*5) | 搭載 |
| *1: | 容量が倍のデバイスもある (PIC16F876) |
| *2: | Universal Synchronous Asynchronous Receiver Transmitter の略。ハードウェアで大部分の通信機能を実行してくれるので効率の良い通信を実現できる。外部との通信に用いると便利。 |
| *3: | Inter-Integrated Circuit / Serial Peripheral Interface の略。オンボードでの IC 間の高速通信を実現する機能で、USB インターフェース用 IC 等との通信に用いると便利。 |
| *4: | Watch Dog Timer |
| *5: | Brown Out Reset の略。電源電圧の低下を検出して自動的にリセットをかける機能 |
このデバイスはシリアル通信機能、A/D コンバータを搭載したものとしては最少のピン数。価格は１０００円切るぐらい。観測データを一時記憶するために外部に小さなSRAM 等のメモリを増設する必要があるだろう。
もう一つ USART,I2C/SPI や A/D コンバータを内蔵していないが、入門用としてお薦めできるものとして PIC16F84A を挙げておく。これは 18 pin の PIC で、16F873ほど高機能を要求されない箇所に配置するのに適していると思われる。こんなに小さいのに、すごく色々なことができるんだと感動するにはいいかも。これは標準で通信機能を持っていないが、解説書に添付のライブラリを使えばシリアル通信も可能となる。
○ 開発環境として必要なもの
- パソコン Windows マシン
- 統合開発環境、プログラム書き込みソフトは Windows 上で動作するため。
- 開発環境ソフト "MPLAB"
- PIC の開発元、Microchip Technology 社が無料で提供している統合開発環境。MPLAB 上で、ソースリスト編集、アセンブル、シミュレーション、デバッグを行う。MPLAB は、自分が持っている PIC の解説書に添付されていた。
- プログラム・ライタ（より詳しい内容は後述）
- ハード
- シリアルポート接続型 PIC ライタ [高橋,トラ技2001.09号参照]・要自作
- ソフト
- Visual Basic 上でシリアルポート制御 API を利用して実現・要自作
- 統合開発環境、プログラム書き込みソフトは Windows 上で動作するため。
○ PIC ライターの概要
〜シリアルポート接続型 PIC ライタ[高橋,トラ技2001.09号]〜
・書き込み仕様
PIC が標準で備えている In-Circuit-Serial-Programming (ICSP) 機能を用いて PIC内部のフラッシュ ROM にプログラムを直接書き込む。ICSP とは、クロック同期の通信でプログラムを書き込む方法。電源を含めて５本の信号線で書き込みができる。
| ピン名称 | 入出力 | ピン機能 |
| RB6 | I | クロック入力 |
| RB7 | I/O | データ入出力 |
| /MCLR | 電源 | 書き込み用電源 (12-14V) |
| Vdd | 電源 | PIC 動作電源 (4.5-5.5V) |
| Vss | 電源 | グランド |
・ライタハード
回路図 → 添付の図参照
シリアルポートの信号線に割り当てた機能
| 信号名 | 入出力 | 割り当てた機能 |
| TXD (Transmit Data) | O | /MCLR の制御信号 |
| RXD (Receive Data) | I | 未使用 |
| RTS (Ready to Send) | O | RB7 へのデータ出力 |
| CTS (Clear to Send) | I | RB7 からのデータ入力 |
| DTR (Data Terminal Ready) | O | RB6 へのクロック出力 |
| DSR (Data Set Ready) | I | 未使用 |
| DCD (Data Carrier Detect) | I | /MCLR 端子のモニタ入力 |
| RI (Ring Indicator) | I | 未使用 |
| GND | - | グランド |
・ライタ制御ソフト
Visual Basic 上でシリアルポート制御 API を利用して実現。MPLAB 上のアセンブラで作成した hex ファイルを、シリアルポート経由で PIC に書き込む。
○ LCD モジュールについて
解説書で紹介されていた LCD モジュールはLCD1602BL で、価格は約１０００円。１６文字２行表示できる。制御には I/O ポート７本必要（データ４本、コントロール３本）。
